概要
W204(ベンツのCクラス)で、キーを回してもエンジンがかからないという現象が出始めた。調べるとステアリングロック(ESL)の不具合により、エンジンを回してもよいという信号が出てこないことが原因のようで、修理をお願いすると10万円コースらしい。
定番の故障らしく、ESLに内蔵されているモーターの劣化が原因という情報が多かったので、交換用のモーターを購入し、ステアリングロックを分解して入れ替えてみたが、残念なことに組み方が間違っていたらしく防犯用のロックがかかってしまい、二度とエンジンがかからなくなってしまった。
このNECチップ(A2C-52724)がロックをかける |
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詳細
1.原因と対処方法を調べる
家内から「エンジンかからないので置いていきます」と近所のスーパーの駐車場から連絡があったので、「バッテリ上がりかなぁ?」と思いながら取りに行くとあっさりエンジンがかかったので、しばらく様子見とした。以降、稀ではあるがエンジンがかからない現象が起きるので、心配でクルマで出かけることができなくなった。調べたところW204の定番の故障のようで、ステアリングロック(ESL)の不具合が原因らしく、修理費用は8万円~15万円と高め。
多くは内蔵モーターの劣化が原因らしいので、モーターだけ交換すれば良いのではないか?と探してみたところ、よほど需要があるらしく、あちこちで売られていることがわかった。
専用のギアが付いているとしても、モーター1個にしては大変高価で、中にはモーター1個で10,000円超のショップもあった。
安価なものの多くは中国からの発送のようなので、今回もAliexpressのお世話になった。
送料込みで900円ほどだったが、後から来たプロモーションメールによると送料込みで500円台のショップがいくつもあったようで、勢いで選んでしまったのを後悔してしまった。
↑のショップのモーターは動作確認したところ問題なさそうだったが、中には粗悪品も有るそうなので、あまり安すぎるのは品質が怪しいのかもしれない。
2.ステアリングロック(ESL)を取り出す
ただでさえ面倒くさい作りをしたクルマなので、ステアリングロック(ESL)を取り出すのはものすごく大変ではないかと思っていたが、以下の小田オートさんの動画を見るとやる気満々になってしまった。
手順がわかっていると安心して作業ができるので、大変ありがたい。
エアバッグは簡単に外せた |
なぜかスピンナーハンドルを使うと楽に回せる |
ハンドルの角度を合わせる印は最初から付いていた |
ここでユニバーサルジョイントが役に立った |
短いジョイントに13mmのソケットを付けて、手探りでESLのボルトにしっかりはめてからレンチで緩めると簡単に外せた。
やっと13mmのボルトが外せた |
やっと取り出せたESL |
完全にESLが壊れて、キーを挿してもハンドルロックが解除できない状態になってしまうと、ハンドルのシャフトが付いている部品ごとアッセンブリ交換(または修理依頼)になるらしいので、ロックが解除できるうちに対処したほうが良いらしい。
動画の解説の中で必要な工具について丁寧に説明されていたが、W204をいじることが度々有るのであれば、E型トルクスソケットとトルクスネジ用のビットは揃えていたほうが安心。
それから、使用頻度は少ないがハンドルを外すときに必要な10mmのヘックスビット(またはそれに代わるもの)と、ユニバーサルジョイントもあると便利。
3.ステアリングロック(ESL)のモーターを交換する
頭の中では、キーを挿したままESLを外したので、このままそ~っとモーターだけ交換して元に戻せば、次にキーを抜いたらロックがかかり、キーを挿したらロックが解除されるという、当たり前の動作をしてくれるものと思いつつ交換作業を開始した。
YouTubeの動画(後ほど紹介)を見ると、専用の道具(交換用のモーターとセットで売られていることが多い)を使って、4本の金属のピンを抜いてESLのフタを開けていたので、似たような道具を作ってピンを外した。
先が潰れた小さいマイナスドライバを活用 |
最後はスルッと抜ける感じ |
このへんまでは問題なかったはず |
新旧比較、下が新品 |
今でもどこで間違いがおきたのかわからない |
そのまま装着するとスイッチの出っ張りが引っかかる |
動かなくなってしまった |
再度キーを挿して抜いたところ何の反応もなくなったので、モーターが粗悪品だったかもしれないと思い、元に戻したが全く反応なし。
額に汗して調べると、ESLが正しい動作にならない場合は、防犯上の理由で基板のNECチップがロックをかける仕組みになっているそうで、一度ロックがかかると元に戻せなくなることを後から知った。
診断機でA25464のエラーが出ていたら元に戻せない |
参考)失敗の原因
既にやらかしてしまい、ESLに代わるエミュレータ(ESLの代わりにエンジンをかけてもよいという信号を出してくれる部品)を業者さんに53,900円(税+代引手数料込み)で作ってもらったので取り返しはつかないが、いいところまで行ってたみたいなので、故障の原因や失敗の原因などを参考までに記載。
交換前に撮影したESLの動作音を改めて聞くと問題なく動いているように聞こえて、ESLが時々動かなくなった原因はモーターではなくバッテリの電圧低下(診断機から警告が出ていた)が原因だったのではないか?と思い始めていた。
しかし、古いモータを電池で回してみると、やっぱりモーターがダメになっていたことがわかった。
Aliexpressで購入した新しいモーターは、正転、逆転共、普通に回る。
しかし、古いモーターは正転は問題ないが、逆転させると回り始めないことがあることがわかった。時々ロックが解除されないという現象は、どうもこれが原因だったみたい。
今回、ESLのエミュレータを作って頂いた業者さんに、ESLが全く動かなくなってしまった原因を教えてもらったところ、白い大きなギアの裏に溝とガイドがあり、その位置がずれていたので施錠・解錠の動作がうまくいかず、それを検知(2つのスイッチで検知)したNECチップが自身にロックを掛けたらしいとのこと。
ここは意識していなかった |
業者さんからは「モーターを入れる前に、白いギアを正転、逆転させてガイドが溝に沿って最後までなぞっていけるか確認してからモーターを入れることをお勧め致します。」と丁寧にご説明いただいた。もう遅いけど..
基板を被せるときに、スイッチの引っかかりをなくすのがすんなりいかず、何度か基板を脱着してやり直したので、そのときにギアが浮いてガイドが溝からズレてしまったのかもしれない。
ちなみに、NECチップのロック解除の方法はあるようで、ヒートガンを使ってチップを外し、専用の機器とソフトを使って再び動くようにできるらしい。以下の動画はロック解除の手順を示したもののようで、ESLの分解手順も参考になる。
専用ソフト(セキュリティソフトを止めないと動かなかった)のダウンロードはできたので、Aliexpressで売っている専用の機器を入手すれば自分でもできそうな気がしたけど、その機器が意外と高価。
また、これが故障の原因とは限らないので、業者さんにお願いして素直にESLエミュレータを作ってもらったほうが吉。
そうは言っても5万円超の出費は痛いので、ESLエミュレータを探してAliexpressを徘徊したところ選択可能な製品、機器、ショップがとても多く、どうやらビジネスとして成り立っているらしい。
以下の動画では、エミュレータの設定手順が紹介されており、エミュレータそのものは3,000円~5,000円で売られていたので自分でもできそうな気がしただけど、専用の機器とソフトの入手を考えると、やっぱり業者さんにお願いするのが吉。
普通に乗っていてもほぼ間違いなく起きる故障らしく、リコール対象ではないか?と思うが、事故につながるような事象ではないので、リコール対象にはなりにくいらしい。
モーターの交換がうまくいっていれば、修理は1,000円未満(工具費別)で収まったかもしれないと思うと、よく確認もせずに実機で動作確認したことが心底悔やまれる。
関連リンク)W204のESLエミュレータを作ってもらう
リンク)W204の整備まとめ
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